専業主婦の休業損害



 専業主婦の方が交通事故に遭われた場合、特に「休業損害」について注意していただく必要があります。

 

1 休業損害とは

 交通事故の被害にあい、怪我のためにしばらく仕事を休まざるをえない場合があります。仕事を休んだために得ることができなくなった収入を「休業損害」といい、加害者に対して賠償請求することができます。

休業損害の計算方法は、 1日あたりの基礎収入  ×   休業日数

によって決まります。例えば、1日あたりの基礎収入が1万円、休業日数が30日間の場合、休業損害は30万円となります。

このように、働いている人の場合には休業損害の計算は比較的容易です。

 

2 専業主婦の場合

 では、事故当時専業主婦だった人の場合はどうでしょうか。

 実は、専業主婦で職に就いていなかった人でも、休業損害は請求できます。

専業主婦の場合、基礎収入をどのように計算するかというと、「賃金センサス」というものを用います。賃金センサスとは、簡単にいうと労働者の年間の平均賃金のことで、専業主婦の場合、女性の全労働者の平均賃金を用います。つまり、家事労働を一般的な労働と同一視し、一般的な労働と同一水準の賃金に値するものと考えられているわけです。

女性家事従事者で用いる賃金センサスは、最新のもの(平成25年度の統計)でいうと、年間3,539,300円、1日あたり9,697円となります。

例えば、30日間家事ができなかった場合、9,697円 × 30日  =290,910円となります。意外と高額だと感じる方も多いと思います。

3自賠責基準

 以上の計算方法や金額は、法律が認めている法律が認めている正当な金額なのですが(これを「裁判基準」といいます)、注意しないといけないのは、保険会社から提示される金額は、通常これよりも低い金額だということです

 よく用いられるのが自賠責保険の基準ですが、自賠責保険の基準では、1日あたりの基礎収入は5,700円とされています。30日間家事ができなかった場合で計算すると、5,700円 × 30=171,000円となります。裁判基準よりも大幅に低いのがわかります。このような場合、きちんと裁判基準で計算した金額を請求する必要があります。

 

4 休業期間

 専業主婦の場合、休業期間をどのように決めるのかについても難しい問題があります。

 例えば、事故で1か月間入院し、その後退院したが、退院後も完治していないため家事労働を十分にできず家族に手伝ってもらい、退院から2か月経ってようやく完治した、という場合です。

 この場合、入院期間中は家事が一切できないので休業期間に含まれるのは当然ですが、退院後の2か月間については、一定割合が休業損害と認定されます。この割合は、怪我の状況や家庭内での立場等様々な事情を考慮して個別的に決定されます。

 裁判例では、61歳の主婦のケースで、事故後しばらくしてから不安感が大きくなり、不眠、恐怖感等の精神症状が現れてから症状固定までの323日間の60%に相当する休業損害が認められたケース等があります(東京地裁平成23年10月24日判決)。

 

5 最後に

 休業損害に限らず、保険会社からの提示金額は必ずしも正しいとは限りません。

 保険会社から金額が提示されたら、まずは弁護士にご相談頂くことをお勧めします。

 

 

 

 

このページの先頭へ