厚労大臣の生活保護基準の引き下げを違法とした判決



平成25年~27年にかけて行われた生活保護費の引き下げが違法として取り消しを求めていた裁判で、大阪地方裁判所は、厚生労働大臣の減額改定は裁量権の逸脱又は濫用があり違法であるとし、原告の請求を認めました。

裁判所は、生活保護基準の設定について厚生労働大臣の裁量権の存在を認めつつ、①厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、②基準生活費の減額に際し激変緩和等の措置を取るか否かについての方針及びこれを取る場合において現に選択した措置が相当であるとした大臣の判断に、被保護者の機体的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、違法になるとの規範を示し、結論として本件保護費の引き下げは①の場合に該当するとし、違法であるとしました。

大臣の裁量が認められている事項について、裁判所が逸脱・濫用を認定し、取り消すということ自体、画期的な判断と言えます。

近年、裁判所は、行政裁量に属する部分について、従前の司法消極主義的スタンスを徐々に改め、積極的に司法審査を及ぼしていくスタンスが見て取れます。この裁判の帰趨は、今後の三権分立の在り方を示唆するものといえるでしょう。

この事件は、当事務所の弁護士が弁護団の一員として担当しました。

判決文をリンクに添付します。

大阪地裁令和3年2月22日判決

 

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