GPS捜査の違法性の判決への影響(大阪地裁平成27年7月10日判決)
裁判所の令状なく被疑者の車にGPSの発信器を取り付けた捜査が行われた件、7月10日に判決がありました。弁護側は、捜査の違法性を理由として、公訴棄却(裁判の打ち切り)ないしは刑の減軽を求めていたのに対し、裁判所は、公訴棄却及び刑の減軽のいずれも否定したうえで、懲役5年6月の実刑を言い渡しました。
この判決に関し、例えば読売新聞ではGPS捜査「違法」でも実刑「量刑上考慮せず」とされ、毎日新聞ではGPS捜査「職務犯罪ではない」 判決、量刑に影響せずとされるなど、違法捜査が量刑に考慮されないという趣旨で紹介されています。
しかし、実際の判決では、「本件のように捜査に重大な違法があるが、他の証拠から有罪認定がなされる場合には、弁護人が主張するように、正義や公平の見地から、捜査の重大な違法を量刑上考慮すべきことも考えられなくはない。しかし、当公判廷において、既に、検察官請求証拠のうち相当数が違法収集証拠又はその派生証拠として証拠能力を否定され、証拠調べ請求が却下されている。前記のとおり、本件以前にはGPSを使用した捜査を違法と判断した裁判例は見あたらないことをも考慮すれば、今後もこのような違法捜査が続けられれば別論、現時点では、証拠調べ請求の却下に加えて、本件GPS捜査の違法を理由に、被告人に対する量刑を軽くすることが正義や公平に適うとは言い難い。」としています。
要するに、捜査の違法性について、現時点では量刑上考慮されないが、今後も同様の違法捜査が行われた場合には、被告人の刑を軽くすることもありうる、としています。つまり、この判決は、今回に関しては違法捜査を量刑に考慮がされないが、今後同様の違法捜査が行われた場合には量刑上考慮されうる、とするもので、捜査機関の捜査手法を強く牽制しています。
この判決を言い渡した裁判所は、去る6月5日、GPS捜査で得られた証拠の多くを「重大な違法」があるとして排除しており、プライバシー侵害の程度が強いGPS捜査は本来裁判所の令状を得て行うべき、との考えを明確にしました。この証拠排除決定と本件判決は、一貫して裁判所による令状規制という刑事訴訟法の本来の枠組みを重視する見解であり、今後の捜査実務はこれらの決定・判決を前提に、GPS捜査の方法が改められるべきであると考えます。