児童手当の受給と養育費(広島高裁平成22年6月24日判決)



 養育費や婚姻費用の金額は、裁判所の算定表を基に算定されますが(養育費算定表)、養育費・婚姻費用を支払うべき側からの主張として、(養育費・婚姻費用を請求する側が)児童手当を受け取っているので、その分養育費・婚姻費用を減額するべき、との主張がなされることがあります。

 

 この点については、広島高裁平成22年6月24日判決が参考になります。

 事案は、平成22年4月より国から支給されることになった子ども手当について、子の養育費の算定あたって考慮すべきかどうかが争われたもので、この争点に関して、裁判所は、子ども手当が単年度限りの法律に基づくものであることや、支給の趣旨・要件などを踏まえ、子の養育費の算定にあたって考慮すべきではないとしました。

 

該当部分を引用します。

「平成22年度における子ども手当の支給に関する法律は,次代の社会を担う子どもの健やかな育ちを支援するために,平成22年度における子ども手当の支給をする趣旨(1条)で制定された同年度限りの法律であり,政府は,平成23年度以降の子育て支援に係る全般的な施策の拡充について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされていること(附則2条2項),その支給要件も,監護者である父又は母の所得に関する制限が設けられておらず(4条1項,2項),厚生労働省雇用均等・児童家庭局長の平成22年3月31日付け都道府県知事宛て通知(雇児発0331第17号)においても,子ども手当については,子育てを未来への投資として,次代を担う子どもの育ちを個人や家族のみの問題とするのではなく,社会全体で応援するという観点から実施するものであると説明されていることからすると,子ども手当の支給は,民法上の扶養義務に淵源を有する養育費の支払に影響を与えるものではないと解されるし,少なくとも,平成22年度限りの法律である同法による子ども手当について,これを継続的な養育費算定において考慮することは妥当でないというべきである。

 

この判決は、子供手当に関するものであり、子供手当が単年度限りの法律に基づくものであることを理由の一つとしていますが、支給要件や趣旨に関しては児童手当においてもそのまま妥当するので、児童手当の場合も同様に養育費算定において考慮することはできない(=婚姻費用・養育費から児童手当分を差し引くことはできない)と考えられます。

 

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