家事事件に関する解決事例①(離婚、慰謝料、財産分与)



依頼者が、夫のDVが原因で離婚調停や慰謝料訴訟を起こすも、夫が虚偽の証言を繰り返したケース。

事例の概要

依頼者のAさんは、20年以上前に夫Bと結婚。しかし、結婚直後から夫BのDV(暴言、暴行)に悩まされる。結婚期間中、夫Bから家を出るように言われ、何度も家を出たが、子供たちのことを考えて離婚を思いとどまり、再び同居をするようになる。そのような中、些細なことから言い争いになり、夫Bに出ていくように言われ、実家に帰ったところ、夫BがAさんの署名を偽造して離婚届を提出した上で、Aさんの実家まで追いかけてくる。Aさんは、夫Bとの関係を悩み相談に訪れた。

解決経過

1. Aさんと接触しないように夫Bへ警告

まず、BにAさんに接触させないようにするため、警察の協力を得て警告を出してもらった。

2. 夫Bの財産を仮差押え

また、夫婦が離婚する際は、離婚時点での夫婦の財産を半分に分ける必要がある。Aさん夫婦には同居期間中の収入により大きな財産があったところ、すべて夫であるB名義であり、放置しておくとBによって財産を処分・隠ぺいされてしまう可能性がある(夫も脅し文句として、財産を処分することをにおわせていた)。そのため、裁判所に仮差押えの申し立てをし、夫による財産の処分・隠ぺいを防止した。なお、仮差押えをした財産は、外国法人発行の振替社債という特殊な債権であり、通常の差し押さえとは異なる手続が必要であった。

3. 夫Bへの調停申し立て及び慰謝料訴訟

とり急いで以上の手続をしたうえで、まずは裁判所で話し合いでの解決をするべく、Bを相手に、慰謝料、財産分与等の支払いを求めて調停を申し立てた。なお、離婚についてはAさんも望んでいたことであり、「追認」という形で、離婚自体は争わないこととした。

しかし、Bは調停の中で、「自分はAに暴力を振るっていない、むしろ、Aが自分に暴力をふるっていた」と虚偽の主張をし、暴力の事実を完全に否定した。また、夫婦の財産に関しては、自身の父親から高額の借り入れがあったとして、父親宛の高額の借用証を証拠として提出し、財産分与の支払いを拒否してきた。

当方は、財産分与に関しては、父親からの高額の借り入れがある旨のBの主張が虚偽であることを示すべく、従前の夫婦の生活状況、父親からの高額の借り入れの必要性がないこと、父親らの生活状況等を客観的証拠によって立証し、結局、裁判所は相手方の主張を否定し、当方の請求を全額認めた。

慰謝料については、別途訴訟を提起した。暴行の事実を裏付ける証拠はほとんどなく(一般に、妻が夫の暴行に悩むというケースの場合、証拠が残っていることの方が少ない)、たまたま「あざ」が写っていたスナップ写真、病院への通院記録、実家の母親の証言などによって立証した。他方で、Bが裁判所に提出した書面の矛盾点や、Bの人物像を指摘するなどしてBの主張が虚偽であることを主張した。

4. Aさんの全面勝訴

結果、裁判所は当方の主張を全面的に認め、かつ、相手方が虚偽の主張をしていることをも考慮して慰謝料を上乗せする判決を出し、最終的には仮差押えをしていた財産から全額回収した。

コメント

離婚等が問題となるケースとしては、①相手方からの暴行脅迫、②相手方の不貞、③相手方との性格の不一致、の3つに大別することが可能です。

①と②については、こちらの主張を裏付ける証拠があるかどうかで訴訟のやりやすさは大きく変わってきます。上にも指摘しましたが、一般的に、直接的な暴行や暴言の証拠が残っているケースは少ないので、間接的な証拠で暴行や暴言の事実をいかに立証するかがポイントとなってきます。一般的に考えられるのは、近隣の人の証言、スナップ写真、メールのやり取り、過去に何らかの機関(法律事務所も含む)に相談に行ったことの履歴などがありえます。

また、相手方の暴行等があるケースでは、最初の段階で相手方との接触を遮断することが必要になってきます。

なお、相手方が暴行の事実を否定する虚偽の主張をしてきたケースは、上記ケースのほかにもたくさんありますが、私の経験としては、虚偽の主張をしてきた場合の方がむしろ明確な矛盾点が出やすくなる上、慰謝料の上乗せも期待できるので、対応はしやすいと感じています。

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