刑事事件に関する解決例①(窃盗罪、執行猶予)
検察官の主張する事実を否定したケース(事実上の無罪判決)。
事例の概要
Aさんは、親族から頼まれて自分名義で銀行の貸金庫を借り、親族に貸金庫を自由に出入りさせていた。しかし、後に親族と不仲になり、貸金庫を解約した。解約当時、貸金庫内に入れた自分自身の現金が入っていたので、これを持ち出した。ところが、親族はこれを自分のお金であるとして刑事告訴。Aさんは窃盗罪で起訴された。
解決経過
Aさんが現金を貸金庫から持ち出した事実は間違いないが、その現金がAさんのものだったのか、親族のものだったのかが争点。
当方は、検察官が保管している証拠書類の開示を受け、親族の貸金庫への出入りの不自然さを指摘。また、法廷で親族に尋問し、親族が高額の現金を貸金庫に入れていたことの不自然性を指摘。さらに、金庫内の様子に関する再現実験を行い、親族の供述が不自然であることを示す。
結果、裁判所は、親族の供述が不自然であるとして、現金がAさんのものであったと認定。
コメント
このケースは、現金が親族のものであるとの検察の主張を否定したものであり、実質的には無罪判決と言えるものです。
刑事事件では、警察が集めた多くの証拠を検察官が持っており、そのうちの検察官に有利な一部の証拠のみを裁判所に提出します。そのため、検察官が裁判所に提出する証拠だけを見ていては、被告人に有利な結果は見込めません。検察官手持ちの証拠の中で、被告人の主張に沿う証拠をいかに開示させるかがポイントです。同時に、検察側証人が嘘をついていることを証拠で明らかにするために、再現実験等、弁護側から積極的に証拠を作ることも大切です。