刑事事件に関する解決例②(過失致傷罪、無罪)
裁判所が検察官の主張を否定し、無罪判決を言い渡したケース。
事例の概要
Aさんは、近所に住んでいるBという男性と以前から諍いがある関係であった。
ある日、Aさんが公園で犬の散歩をしていたところBの子供がAさんの近くを通りかかった。そのとき、Aさんの犬が吠えた。すると、Bは、Aさんの飼い犬がBの子供に噛みついたとして、そのまま警察に被害届を出すなどし、結果、Aさんは過失傷害の罪で裁判にかけられることとなった。
解決経過
1.一審
検察官が証拠としているのは、子供の足に2つの傷がある写真と、子供の供述であった。
弁護人は、足の傷の写真について、学者に鑑定をしてもらったところ、傷は外傷性のものではなく、Aさんの飼い犬が噛んだことによってできた傷でないこと(皮膚の疾患であること)を証明してもらった。また、法廷でBの子供の尋問を行うとともに、Bが虚偽の被害申告をする動機があったことの証拠として、Bの過去の経歴や言動等を立証した。
しかし、一審では有罪判決となった。
2.控訴審
高等裁判所で行われた控訴審では無罪となった。
傷の写真に関しては、学者の鑑定を採用し、また、子供の供述に関しては、Aさんのことを快く思っていなかったBの影響を受けて不正確な供述をした、と判断した。
コメント
隣関係などで諍いがある場合に、虚偽の、あるいは大げさな被害申告をされて刑事事件となってしまうこともよくあることです。
虚偽の被害申告の場合には、必ず検察官の証拠の中に不自然な点や矛盾する点があります。今回のケースでは、たまたま付着していた足の傷も、医学者の立場から見ると外傷性のものではないと判断されています。
虚偽の被害申告の場合には、検察官の証拠を十分に吟味して不自然な点や矛盾する点を見つけ出す作業が、弁護人としては非常に重要になってきます。